2023-04-17 20:45:28

おしらせ

教科書ないの?

では、なにをつかって?

  • ビジネスキャリア検定教科書がよくできている。
  • 労働法制については、以下がよい。
    • 佐々木亮(2021)『会社に人生を振り回されない武器としての労働法』角川書店。
    • 水町勇一郎(2011)『労働法入門』岩波書店。
  • その他、各回に参考文献を示す。

科学的管理法概要

F. W. Taylor (1856 - 1915)

このころにあった出来事

  • 1856年(安政3年)
    • クリミア戦争終結。産業革命の威力を確認。
    • 日本はまだ江戸時代。開国からわずか数年。
  • 1915年(大正4年)
    • 「クリスマスにはまた家に帰ってきますよ」(シュテファン・ツヴァイク『昨日の世界』)はできなかった。総力戦が幕を開く。
    • 日本はまだ産業革命を経験したばかり。

工場育ちの機械工学者

  • 法学部志望の名家出身アメリカ人。目が悪くなって断念
  • 挫折してポンプ屋さんに転身
    1. ポンプ屋さんで職工から機械技師へ
    2. ミッドベール製鐵所にて工程管理
    3. コンサルタントみたいな仕事もしている
  • 「経営学の祖」ということになっている。工学分野においては、ハイス鋼と呼ばれる金属切削加工用刃物材料発明者として有名。現在でもドリルの刃に用いられる材料である。

出発点は機械加工

  • 旋盤加工からはじまった
    • ひとりでする作業
    • 職務範囲が明確な作業
  • 集団作業や職務範囲が不明確な作業は科学的管理法にとって当初から対象外。

旋盤加工

ご関心がありましたらどうぞ。

Taylorが直面した課題:能率向上

  • 能率:予定通り進捗したかを表現する指標
    • なるべく1に近いほうがいい:1未満は計画未達。1以上は見えない要因あり。
    • 1より小さくなる要因群をTaylorなど能率技師が解決しようとしていた
  • 定義

\[ Efficiency = \frac{e_{real}}{e_{planed}} \]

動作時間研究

  • 科学的管理法の真髄:観察と実験
  • 作業を細分化して記録する
    • 記録版を用いて測定・記録
    • これ以上分割しても無意味な動作の集合(課業)にまで細分化
    • 科学的管理法を課業管理と呼ぶこともある

参考 科学的とは

科学の世界のお作法を職務に持ち込んだ

  • 科学における標準的な条件を満たす
    • 観察:自然現象や社会現象をみて記録すること
    • 実験:上記現象の一部を切り取って実験室内で再現すること
  • 関連する諸概念
    • 再現性:同じ結果を得ること
    • 互換性:とりかえられること
    • 規格化:工業製品生産における条件をそろえること

作業標準

標準=だれがやってもおよそ同じ結果を再現できる

  • 標準作業手順と標準作業時間
    • 標準作業手順:唯一最良の手順と呼ばれる不変の目標
    • 標準作業時間:標準作業手順を実施するために要する時間
  • 現代は平均作業時間に余裕率を足して推定する

参考 標準作業時間

  • 平均作業時間\(\mu+余裕率\rho\)
    • \(N(\mu, \sigma^{2})\)する(ばらつく)ことを考慮、標準作業時間を\(\mu \pm \rho)\)と決める(レーティング)。
    • \(\rho\)決定にはさまざまな方法が提案される。
  • \(\rho\)が小さくてすむよう、\(\sigma\)(ばらつき)を小さくすることが勘所。
    • \(\rho\)過小だとショックに耐えられない。大きさは経験的に決定される。むやみに\(\rho\)を削ってはいけない

図的理解

\(N(\mu_{0}, \sigma^{2}_{0})\)(赤い線)から\(N(\mu_{1}, \sigma^{2}_{1})\)(黒線)へ。

だれが作業標準をつくる?

  • 計画部と呼ばれる専門家集団
    • 作業はしない。記録だけ
    • 現在はIndustrial Engineer (IEr) と呼ぶ
    • 生産管理と呼ばれる活動の祖
  • 構想と実行の分離

だれをお手本に作業標準をつくる?

  • 意欲と能力にあふれる作業者
    • 能力が高すぎるとお手本にならない
    • 能力が低くては話にならない
  • シュミット君:科学的管理法に登場するオランダ出身25歳
  • ふさわしい対象はすぐにわかる

作業標準でなにをするか?

指図票

  • 作業標準を作業者に指示するために用いる文書
  • 作業標準をつくるコツは3つ。
    • 標準化 Standardization:作業者を選ばず同じ結果を得る
    • 単純化 Simplification:簡単
    • 専門化 Specialization:毎日変わらない

差別的出来高払賃金制度

作図すると理解が進みます

\[ W(e) = \alpha e + \beta \\ \alpha = \left\{ \begin{aligned} \alpha_{0} \ \ \ if \ e < e^{*} \\ \alpha_{0}+\alpha_{1} \ \ \ if \ e \geq e^{*} \\ \end{aligned} \right. \\ \beta = \left\{ \begin{aligned} \beta_{0} \ \ \ if \ e < e^{*} \\ \beta_{0}+\beta_{1} \ \ \ if \ e \geq e^{*} \\ \end{aligned} \right. \]

意味

  • 標準作業量を超えるかどうかで賃金が変わる
    • 標準作業量:単位期間(例、1日)に作業標準通りに作業すると得られると推定される生産量
    • \(\alpha\):賃率。生産量と賃金との対応関係を示す項。
    • \(\beta\):一時金(賞与)。
  • 金銭による誘引
    • 誘引:なにかさせるためのエサ
    • 標準生産量を超える生産量を達成したい。能率を1より大きくしたい

その他いろいろ

  • 職能別職長制度:労働者だけでなく管理監督者による職務も細分化する。
  • 標準原価計算:作業標準に基づく原価計算。
  • 要素技術は完成済
    • すでに実施済みであることを組み合わせる
    • J. A. Schumpeterによる「新結合」

なにがそうさせたか?

内部請負制度

  • 未熟な生産技術にて大量生産する苦肉の策
  • QCDが不明
    • 事実上管理が現場管理者に一任されるため
    • 収益機会を逸する結果に
  • 不明なら作業標準から明らかにすればいい

システムによる怠業

  • 経営者が恣意的に賃率を変動させることによる怠業
    • 人間は疲労する。怠業はある程度やむを得ない
    • 労働者に非がない怠業は使用者が責任を負わなければならない
  • 恣意的になると賃金が確率的に変動すると(下例)、やがてまじめにはたらかなくなる

\[ W(e) \sim N(\alpha e + \beta, \sigma^2) \]

  • 恣意的(労働者からみると確率的)に変動させないように、明快な基準を設ければよい

外国人労働力

  • 欧州で飢餓と戦乱に巻き込まれて米国に逃げてきた人々
    • 言葉が通じない:東欧とドイツとイタリア出身者
    • 作業経験がない:もともと農家が大半
    • 労働意欲はある:とにかく食べるものがほしい
  • 3Sで作業指示すれば立派な人的資源として活用できる

米国向け移民数推移

対立発生:Taylor、議会に召喚さる

  • 労働者対使用者:熟練労働者にしてみれば、人生をかけて獲得した生計手段を奪われるに等しい
  • 新旧移民労働者は対立する
    • 新移民労働者:中・東欧から。半熟練労働者として生きるしかなかった。
    • 旧移民労働者:西欧から。内部請負制度に適合、熟練労働者として地位を築く。
  • 劇的な労働生産性向上が科学的管理法を正当化する

科学的管理法を批判する人々(当時)

  • マックス・ウェーバー(1864-1926)
    • 社会学の泰斗。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『職業としての学問』など。
    • 「経営の機械化と規律化との最終的帰結を実現している。ここでは、人間の精神的肉体的な装置は、外界、すなわち道具や機械が、つまり機械作用が、人間に提示する諸要求に完全に適応させられ、彼自身の有機的構造によって与えられるリズムは虫されて、ここの筋肉機能への計画的分割と最善の力の経済とを厚生することによって、労働諸条件に適合するように、新たなリズムを与えられる」(『支配の社会学』)

機械モデルないし経済人モデル

経営学的解釈

  • 労働力を機械要素(部品)扱いしているようにみえる
    • そうでもしないと活用できなかった労働力と覆ららなかった管理方式
    • 技術革新には大いに貢献
  • 後世、大いに批判を受ける
  • 上記した苦境を他にどう乗り越える?

参考文献

  • 有賀裕子(2009)『科学的管理法』ダイヤモンド社:最新邦訳。一度は目を通すといい。英語なら無料で読める。
  • 中川誠士(2012)『テイラー』文眞堂:テイラー論説。
  • 三戸先生御作も是非。

クイズ

2023年4月25日18時締切。1点配点。要長大アカウント。

次回 Taylorの科学的管理法(続)